こちらのコーナーでは、お気に入りの本をどんどん紹介していく予定です。
日頃から面白い本に飢えていますので、あなたのお気に入りもぜひぜひ
教えてくださいね(^^)




  • 姑穫鳥の夏 / 京極夏彦
  • 後宮小説 / 酒見賢一
  • 屍鬼 / 小野不由美
  • 桃花源奇譚 / 井上祐美子
  • はてしない物語 / M・エンデ
  • 光と闇の姉妹 / J・ヨーレン
  • 魍魎の匣 / 京極夏彦
  • 嗤う伊右衛門 / 京極夏彦



  • あずみ / 小山ゆう
  • コジコジ / さくらももこ
  • てのひら童話 / おーなり由子
  • 動物のお医者さん / 佐々木倫子
  • ともだちパズル / おーなり由子
  • 20世紀少年 / 浦沢直樹
  • MASTERキートン / 浦沢直樹
  • 李朝・暗行記 / 皇なつき






アイルランド 人・酒・音 愛蘭土音楽紀行
著者 守安功
東京書籍(1997)

アイルランド音楽の演奏家である著者が、かの地で知り合った音楽に携わる人々との
交流を回想するいわゆる「旅もの」。アイルランドが好きな方なら必読の一冊です。
伝統音楽に用いられる楽器についてもわかりやすく解説しており、入門編として最適
の一冊と言えるでしょう。
写真も著者が担当していて、アイルランドの雄大な自然とそこに住む素朴な人々の
表情がとってもいい感じ。赤ら顔のおじさんたち、同じく赤いほっぺの女の子たち・・・。
見ているうちにアイルランドへの憧れが強くなっていきます。
タイトルに「人・酒・音」とあるのに、お酒についてはあまり触れていないのが不思議
ですが、まあ、細かいことは気にしない気にしない(^^)


あずみ
著者 小山ゆう
小学館 ビッグコミックス@〜

時は戦国末期。刺客として育てられた美しい少女・あずみが、幾多の苦難を乗り越え
行き抜いていくさまを描いた歴史アクションもの。
正直なところ小山ゆうの絵は好みではありませんが、アクションの描写は迫力充分。
マンガそのものはすごく面白く、読み始めると止まらなくなってしまいます。
時代が時代だけに殺伐としていて、ものの哀れを痛感する場面も少なくありませんが、
純粋無垢な外見とは裏腹に尋常ならざる強さを持つあずみが、人を殺めることに疑問
を抱きつつも、次々と迫り来る魔の手を退け突き進んでいくさまはとにかくカッコいい!
ともあれ、「迫力あるマンガを読みたい!」という方には文句ナシにオススメです(^^)
ある大物の命を奪うまでが特に面白いのですが、その後の展開はちょっと食傷気味
に思えるかもしれません。
どうやら小山ゆうは『あずみ』をライフワークにしたいと考えているようですから、あずみ
はこのまま終わりなき戦いの道を、ひたすら歩み続けることになるのかも・・・。


河童が覗いたインド
著者 妹尾河童
新潮文庫

舞台美術家で、小説『少年H』のヒットでも知られる妹尾河童さんの細密なスケッチを
堪能できるインド旅行記。このシリーズにはヨーロッパ編や日本編もありますが、この
『河童が覗いたインド』は河童さんの真骨頂ともいうべき完成度で、インドが好きな方
はもちろんのこと、インドに行ったことがない方、行く気もない方にもぜひオススメしたい
一冊です。
インドの名だたる建造物や泊まったホテルの部屋を描いたスケッチはもちろんのこと、
文章もすべて手書き。どのページをめくっても高い芸術性を味わうことができます。
この本を読んで河童さんのファンになられた方は、同じ新潮文庫の『河童の手のうち
幕の内』もぜひお読みください。どうして名前が「河童」なのかという謎が解けますよ。


偽史冒険世界 カルト本の百年
著者 長山靖生
ちくま文庫(2001)

大衆文学研究賞受賞作。
どうして人はカルトにはまるのか、という命題を、義経=ジンギスカン説や日ユ同祖論、
竹内文書など、過去に世間を騒がせたトンデモ本の著者の生い立ちを追うことで解明
しようとする、ふざけたタイトルの割にはなかなか読み応えのある一冊。
理想を追い求めるあまり、いつしか妄想にとらわれ、周囲の人々まで巻き込んでいく
さまを読んでいると、こんなこと信じるなんてバカバカしいなと思う半面、そのバカバカ
しいことを信じてしまう人間の怖さを痛感させられます。彼らが残したトンチンカンな説
や思想は、宗教やフィクションの世界で根強く残っていますし、それを信じてしまう人々
があとを絶ちません。
実はかくいう私も、『竹内文書』にのめり込んでました。しかも、小学生の頃から(^^ゞ
幼くしてそういう世界に興味を持っていただけに、大人になってみると幼稚な世界に
思えてならないのですが、ある意味甘美な世界だということも事実。だからといって、
安易にそうしたものを信じるのではなく、笑い飛ばす心の余裕を持ちたいものですね。
『トンデモ本の世界』同様、カルトやサブカルチャーに興味を持った方にとっては必読
の書といっても過言ではないでしょう。


後宮小説
著者 酒見賢一
新潮文庫

第1回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
舞台は中国を思わせる架空の国。無謀にも、「3食昼寝つき」に憧れて後宮へ入った
少女・銀河の波乱万丈の半生を描いた物語。
素乾国という架空の国が舞台なのにあたかも史実のように、ありもしない後世の文献
を引用して注釈を加えるなど、いかにも見てきたようなウソが満載。いわば、架空歴史
小説とでも言うべきでしょうか。ウソを書くなら徹底的にリアルなウソを、という意気込み
が伝わってきて、当時童話作家をめざしていた私には目からウロコの作品でした。
もちろん、そんなことは抜きにしてもなかなか面白い作品です。特に中国を舞台にした
小説が好きな方にオススメ。
かなり前になりますが『雲のように風のように』というタイトルでアニメ化もされており、
こちらのほうは後宮が舞台だというのにお子さんにもオススメできる内容です(^^)


コジコジ
著者 さくらももこ
ソニー・マガジンズ コミックス全3巻

さくらももこといえば何と言っても『ちびまる子ちゃん』ですが、そのシニカルな作風に
加えて、不条理さをいかんなく発揮したのがこの『コジコジ』。
メルヘンの世界が舞台で、全編とにかくナンセンス。コジコジたち独特なキャラクター
を気に入った方なら大丈夫ですが、そうじゃない方にはとうていついてけない世界。
つまり、好き嫌いがはっきり分かれる作品ですが、騙されたと思ってお試しあれ。
ときどき心にじーんとくるエピソードもあって憎らしい限りです(^^)
それにしてもコジコジはかわいい!
こんな子がそばにいたら・・・うっとうしいだろうなあ、やっぱり(^^;


てのひら童話
てのひら童話 空のともだち
てのひら童話 さよならの魚

著者 おーなり由子
角川書店(1993、1995、1998)

おーなり由子さんの著作の中で、いちばんのお気に入りがこれ。
『てのひら童話』、『てのひら童話 空のともだち』、『てのひら童話 さよならの魚』の
3冊に分かれています。
著者曰く「めくるめくストーリーではなくて、独り言みたいな詩みたいな話」。
「てのひらにのるぐらいの、ちいさい話」を集めた短編集ですが、どのお話もほんのり
じんわりと暖かくて、ひとつひとつ大切に読んでじっくり味わいたいものばかり。
主人公は人間ばかりでなく、犬だったり魚だったりカエルだったり、花だったり葉っぱ
だったり、HBの鉛筆だったり。
童話ではあるけれど、大人になりかけた子供や、かつて子供だった大人にオススメ
です。
筆でさらりと描いているように見えますが、これが想像力をふくらませるには好都合。
味わい深いその素朴な絵は、遊佐未森さんや村上ユカさんの歌に通ずるものがある
ような気がします。
そういえば、おーなり由子さんは遊佐さんとは仲がよくて、『さよならの魚』の巻末には
『遊佐未森からの50の質問』が載っています。


ともだちパズル
著者 おーなり由子
集英社文庫(コミックス版) おーなり由子作品集2(1998)

『りぼん』に掲載されていた初期の作品を集めた短編集。
誰もが少しは心当たりがありそうな少女時代の思い出をいかにも子供らしい関西弁で
綴っていて、等身大のお話だけに『てのひら童話』よりも身近に感じられることでしょう。
でも、じんわりと染みてくるところは同じ。どうやらおーなり由子さんの作品は、即効性
はないけれど、漢方薬のようにゆっくりと効いてくるようです。
これを描いていた頃のおーなり由子さんはまだ10代で、高校や大学に通いながら、
ひとつひとつていねいに書いてらっしゃったようです。思い出がそれほど遠い昔のこと
ではなく少し前の出来事だったからこそ、こんなに素朴で心に染みる作品に仕上げる
ことができたのではないでしょうか。
書店で見つけるのはなかなか難しいようですが、『てのひら童話』を読んで感動した
方ならきっと気に入っていただけるはず。ぜひ探してみてください。


トンデモ本の世界
と学会・編
宝島社文庫(1999)

とにかく笑える一冊。
「トンデモ本」とは、「著者が意図したものとは異なる視点から読んで楽しめるもの」。
すなわち、「著者の大ボケや、無知、カン違い、妄想などにより、常識とはかけ離れた
おかしな内容になってしまった本」のこと。本人はいたって大真面目に書いているだけ
に、常識的な判断ができる人にはおかしくて仕方がない代物になっているというわけ。
主として採り上げられているのは、UFOやオカルト、超科学・擬似科学、陰謀史観、
予言、偽史・超古代史を扱った類の本の数々。いかに間違っているかをわかりやすく
解説し、笑い飛ばしています。
太陽は熱くないとか、お札には悪魔のメッセージが隠されているとか、セブンイレブン
も悪魔の陰謀だとか、オハイオ州の語源は「おはよう」だとか、とにかくトンデモない
内容でいっぱいです。
オカルト好きの友達が、読んでもいないのに「他人の過ちにつけ込んだ本」と評して
いましたが、他人の無知につけ込んで売りさばこうというトンデモ本のほうがよっぽど
性質が悪いような気がします。まあ、トンデモ本を書いている当人にはそんな認識は
さらさらないのかもしれませんけど。
何を信じていいのかわからなくなりそうなご時世だからこそ、読んでいただきたい本。
続編の『トンデモ本の逆襲』もオススメ。


光と闇の姉妹
著者 ジェイン・ヨーレン
ハヤカワ文庫FT(1991)

アメリカの女流ファンタジー作家による秀逸な長編ファンタジー。
女性ばかりの郷で育てられた白髪の少女ジェンナが、予言に導かれるように動乱の
中へ歩んでいく・・・というストーリーは、何でもありのファンタジーの中ではそれほど
目新しいものではありません。儀式によって双子のような闇の妹(影のような存在)
が作り出され運命を共にするという設定もありますが、これもまあ、驚くほどでもない
でしょう。
私がさほど有名ではないこの作品を高く評価しているのは物語の合間に挿入された
神話や予言、説話、伝説、歴史、そして歌の数々。
物語を補強するためにもっともらしい神話や予言を創作するのは珍しいことではあり
ませんが、この作品では、後世の人々が伝えた説話や伝説、そして学者が記述した
いかにも散文的な歴史など、物語がその後どのように伝えられ、変化していったかと
いう、知的好奇心を刺激する楽しみ方ができるのです。特に、迷信としか言いようが
ない「闇の妹」に関する後世の学者の検討外れな解釈は「ホントは違うんだってば」
と心の中でツッコミを入れたくなっちゃうほど。
なんと、歌には楽譜まであり、楽器をたしなむことさえできれば演奏することも可能。
もちろん物語そのものもなかなかいい出来。主人公の心情の描写がなかなか巧み
で、現実には決してありえない物語ながら、ぐいぐい引き込まれてしまいました。
実はこの小説は前後編の前編にあたり、後編は『白い女神』というタイトル。物語が
急展開するものの、キャラクターの魅力が半減してしまったような気がして残念。
ともあれ、筋金入りのファンタジー好きにはぜひとも読んでいただきたい作品です。
古い本だけに、入手は困難でしょうけど・・・。