Mimori Yusa


日本でいちばん好きなアーティストといえば、遊佐未森。
1964年2月20日宮城県仙台市生まれの彼女は、1988年4月1日『瞳水晶』でデビュー。
EPICソニー在籍中にベスト盤2枚を含む12枚のアルバムを、1997年に東芝EMIに移籍後
はこれまでに4枚のアルバムを発表しています。
伸びやかでクリアな歌声が特徴。癒し系の音楽(あちこちで書いていますが、私はこの表現が
どうも好きになれません)が流行っている昨今、本当に癒されたいのなら彼女の歌をオススメ
します。就寝前にぜひお試しください(^^)

私はノスタルジックな初期の作品が好き。
聴いているうちに浮かんでくる心象風景は、まだ小さな子供の頃に見たものか、それとも夢の
中の光景だったのでしょうか。
過ぎ去りし日々の切ない想いがまざまざと甦って、じーんとくることも。
初期の楽曲をリアルタイムで聴いていた頃、偶然にも当時の私の気持ちをそのまま歌にした
ような曲が多かったので、すっかり感情移入していたものでした(^^)
今ではかつてのように毎日聴いてはいませんが、たまには初期の楽曲に静かに耳を傾けて、
甘酸っぱい過去を思い出すのも一興でしょう。
詳しい情報を知りたい方は公式サイト「Harmonica Park」をご覧くださいませ。


☆DISCOGRAPHY


この他にもさまざまなアーティストのアルバムに参加しています。
ここでは、その中からいくつかのアルバムを紹介しましょう。



瞳水晶
遊佐未森の記念すべきデビューアルバム。キャッチコピーは「あきない、たいくつ」。
まだ若々しく硬い(?)歌声と、今後の方向性を模索しているかのような実験的なサウンドが
特徴。サウンドプロデュースは成田忍。まだ外間隆史の影響力が弱いせいか、続く『空耳の
丘』や『ハルモニオデオン』とはまた違った世界が広がっています。
デビュー曲『瞳水晶』や『Happy Shoes』、『水夢〔スイム〕』といった、外間隆史が手がけた歌
には一人称に「ボク」が使われていて、その後のノスタルジー路線の萌芽が感じられますが、
『桜』(作詞は工藤順子)のように少女の視点で歌ったものもあり、いろんな意味で中性的な
アルバムと言えましょう。
それにしても、「あきない、たいくつ」ってなかなか難しい境地ですよね(^^)

空耳の丘
外間隆史がそのパワーをいかんなく発揮したセカンドアルバム。
帯には「CD+写真集+童話 遊佐未森・デビュー第二作は、聴く、見る、読むのハーモニック・
アルバム」と書いてあり、ブックレットには、ほの暗い大自然の中静かに佇む遊佐未森の写真
と、外間隆史による短編童話が掲載されています。
音階が「ソ・ラ・ミ・ミ」になっているインストゥルメンタル『空耳の丘』に始まり、12曲中8曲が
外間隆史の作曲。遊佐未森も『川』という小学唱歌のようなバラードで作詞・作曲に挑戦して
いますが、歌声にはまだ硬さが感じられ、外間ワールドの世界を歌わされているかのような
感がなくもないのですが・・・。
外間・工藤順子の黄金コンビによる『地図をください』がシュワちゃんが車を担ぐカップヌードル
のCMソングに選ばれ、この作品で遊佐未森を知った人も多いことでしょう。

ハルモニオデオン
3作目にしてとてつもない完成度を誇る、初期の傑作。
「ハルモニオデオン」とは「ハーモニー」と「オデオン(劇場)」をかけ合わせた造語だとか。
このアルバムでも外間隆史のパワーが全開。
前作に引き続きブックレットには童話が付されていますし、全12曲中遊佐未森が3作、太田
裕美が1曲手がけている他は、全て外間隆史が作曲を担当。
作詞のほうはインスト・ナンバーの『ハルモニオデオン』と遊佐未森が作詞・作曲した『Water』
以外は全て私の大好きな作詞家・工藤順子が手がけています。前作のノスタルジー路線を
さらに推し進めた歌詞には、空や川、森、丘といった自然の他に、レトロな雰囲気を醸し出す
キーワードがふんだんに見られます。どの歌も一人称は「僕」。まだ無垢な心を失っていない
少年の歌と言えるかもしれません。
幾重にも重ねたバックコーラスなどサウンドも凝りまくっていて、まさにチームとしての「遊佐
未森」が完成の域に達したアルバムと言えるでしょう。
とにかくオススメです!

HOPE
初期のアルバムの中でも、特にお気に入りの1枚。
ひとつの頂点を極めた(?)前作と比較すると明確な路線変更はないようですが、変化の兆し
が窺えます。今作でも外間隆史による楽曲が少なくないものの、前作から彼と共にサウンド
プロデュースに携わってきた中原信雄の色が若干強調されているのかもしれません。
作詞は工藤順子の他に新たに井上妙が参加。遊佐未森も『君のてのひらから』で作詞・作曲
を手がけた他、『いつの日も』、『午前10時午後3時』も作曲。次第に自分らしさを発揮しつつ
あるのが感じられます。
歌声にはまろやかさが感じられるようなり、『夏草の線路』や『野の花』など外間&工藤コンビ
による楽曲もますます円熟味を増し、中原&工藤による『雪溶けの前に』や外間&井上コンビ
による『夢をみた』も素晴らしい仕上がりに。
1作目から装丁を担当している石川絢士の腕も冴え渡り、ジャケットのデザインは『モザイク』
と並んでいちばんのお気に入りで、いろいろと影響を受けました。
帯のコピーは「希望の在処(アリカ)」。『HOPE』というタイトルを冠していながらも、片想いや
別れなど切なさを感じさせる歌が多いのが特徴。切ないからこそ、希望が必要なんですね。

モザイク
遊佐未森にとって最初の転換期となるアルバム。初のセルフプロデュース作品で、サウンド
プロデュースは中原信雄が担当。12曲中9曲が遊佐未森自身による作曲で、外間隆史は
たった1曲提供しているのみ。作詞は工藤順子、井上妙、そして遊佐未森。
帯のコピーは「音のカケラを集めたら こんなモザイクができました」。
後半に23分に及ぶ組曲『Language of Flowers』が収録されていたり、全編通して歌詞から
「僕」が消えて性別が不明確になっていたり、いろいろと新しいことをやってみようという意気
込みが伝わってきます(『われもこう』には「髪を切った 男の子みたいに」という歌詞が出て
きます。遊佐未森が彼女自身の視点で歌い始めた最初のアルバムなのかもしれません)。
石川絢士の凝りに凝ったデザインもこれで一段落。これまでのアルバムにあしらわれていた
何となく「ゆさ」と読めるロゴも見納め。ジャケットには毎回帽子を被った写真が使われていて、
本作でもジャケットではやはり帽子を被っていましたが、ブックレットをめくると帽子を取った
写真も掲載されていて、初めて見たとき、新しい遊佐未森の誕生を感じたものでした(^^)

桃と耳 遊佐未森ベストソングズ
転換期を迎え、長い準備期間中にリリースされた初のベスト盤。
これまでシングルカットされた曲の大半が収録されていて、これから遊佐未森を聴こうとする
入門者には安心してオススメできる内容です。
これまでアルバム未収録で、すでに廃盤になっていた『真夜中のキリン』が収録されていて、
シングルを買い逃したファンにとってもうれしい内容だったようですが、『真夜中のキリン』を
すでに持っていた私にとっては、新たにアレンジされた楽曲もそんなに変わり映えがしない
ような気がして、正直なところもの足りない仕上がりでしたが・・・。
『午前10時午後3時』のアレンジはこちらのほうが好き。

momoism
いろんな意味で確実な変化を感じさせるアルバム。
「遊佐未森の有機音楽効果。」というコピーは意味不明ですが、派手な音を排し、凝りつつも
シンプルなサウンドでふんわりと浮遊感の漂う楽曲が揃った本作は「有機栽培された音楽」
と言えるかもしれません。
ちなみに『momoism』の「momo」は桃と「Mimori's Organic Music Operation」の略の両方
を意味しているとか。
今回も遊佐未森のセルフプロデュースで、全12曲中10曲が彼女自身の作曲。外間隆史も
参加していますが、かつてのようなノスタルジー路線はすっかり影をひそめています。
詩の朗読のような『虫の話』、ゴフスタインの同名の童話をモチーフにしたメルヘンチックな
『ブルッキーのひつじ』など異色作もたくさんあり、なかなか楽しめる内容になっています。
夜を歌った子守唄のような楽曲が多いので、私はこのアルバムを「夜のアルバム」と呼んで
います。お休み前にいかがでしょうか(^^)

水色
アイリッシュ・バンド・ナイトノイズ(Nightnoise)と共演した6曲入りのミニアルバム。
演奏は全面的にナイトノイズが務めており、アコースティックなサウンドが心地よい仕上がり
になっています。もっとも、これまでの凝りに凝ったアレンジを聴き慣れた方にはもの足りなく
感じるかも。
特筆すべきは遊佐未森が作詞・作曲を担当した『大きな靴』。
恋心をそこはかとなく感じさせる奥ゆかしい(?)これまでの歌にすっかり慣れていた私は、
はっきり恋心を表現したこの歌を初めて聴いたとき面食らってしまいました。
前作『momoism』では一人称に「僕」を用いたものがありましたが、このアルバムでの「私」
は明らかに女性で、女心を、しかも恋心をはっきりと歌っているのです。
「ああ、ユサ坊(遊佐未森)も恋をしてるんだなあ」と思ったことは言うまでもありません(^^)
オススメはナイトノイズの感動的な名曲『Island of Hope and Tears』の日本語ヴァージョン。
大飢饉に見舞われたアイルランドに別れを告げ、新天地アメリカへと旅立つ移民の歌。
いろいろと思い入れのある曲なので、今でもじーんときちゃいます(^^ゞ

アルヒハレノヒ
帯のコピーは「遊佐未森、新境地。音楽の新しさ、歌の歓び、ここにいっぱいあふれてる。
アロ〜ハ、ミモリータ!!」。うーん・・・(^^;
前作でアイリッシュサウンドとの邂逅を果たした彼女。本作ではさらなるアイリッシュへの傾倒
を見せるかと思いきや、いきなり「楽園」をテーマにハワイアンに挑戦。
冒頭の『Floria』は南国ムードですし、、続く『恋かしら』も都会(?)が舞台ながらハワイアンを
意識したサウンドですが、しばらく聴いているうちにだんだん「楽園」というキーワードがどこか
へ行ってしまうのが残念。
全体に恋愛の歌が多く、発表当時、戸惑いを隠せないファンが多かったようです。
外間隆史が作曲に復帰し、工藤順子との黄金コンビが復活。前述の『恋かしら』や『Diary』と
いった楽曲を提供していますが、かつてのような外間ワールドはもはや感じられません。
オススメは『恋かしら』、『Diary』、遊佐未森作詞・作曲の『咲くといいな』。
『恋かしら』のバックコーラスにはSandiiが参加しています。

acasia
ジャケットの写真は植田正治によるもの。
その写真の中でひとり佇んでいる遊佐未森は大人の女性らしさを醸し出し、初期のアルバム
の中性的な雰囲気は完全に払拭されています。
アルバムに収録された楽曲もフェミニンな印象を受けるものが多く、初期の作品の雰囲気が
苦手だという方にもオススメできるかも。
当初、私は「何だかすっかり普通っぽくなっちゃったなあ」と感じてあまり聴いていなかったの
ですが、海岸沿いを運転しているときに聴いていて、ドライブにぴったりだと気づいてからは
すっかりお気に入りに。前作あたりから海を題材にした歌が増えていることもあり、北海道の
海岸線をひた走るにはうってつけなのです(^^)
工藤順子の参加はこのアルバムが最後。
その後、上野洋子がプロデュースした『ナーサリー・チャイムス』に共に参加して旧来のファン
を喜ばせましたが、遊佐未森のアルバムに復帰する気配はなく、残念な限りです。
スピッツの草野マサムネが作詞・作曲を手がけた異色作『野生のチューリップ』も収録。

roka
帯に書かれたコピーは「アイルランドの大地で濾過(ロカ)された天然音楽。」。
ナイトノイズと再び手を組み、ダブリンでレコーディング。外間隆史がプロデュースを担当して
いますが、ほとんどの楽曲を遊佐未森自身が作詞・作曲。
アイルランドの伝統音楽が好きな私は、アルバムを手にするまで『水色』以上にアイルランド
への傾倒を感じさせる内容に仕上がっているのでは、と期待していたのですが、いざ聴いて
みると、アイリッシュネス(アイルランドらしさ)はあまり感じない仕上がり。アイルランド音楽の
エッセンスをうまく吸収し、その上で遊佐未森らしさをうまく表現した出来栄えになっています。
雑味を取り除いた、まさに濾過された音楽と言っても過言ではないでしょう。
本作でも海を題材にした歌が目立ちますが、思い浮かべるのはアイルランドの荒涼とした海
ではなく、のどかに広がる日本の海なのではないでしょうか。
ベスト盤を除けばEPICソニー時代最後のアルバムで、試行錯誤の末たどり着いたひとつの
到達点と言えるかも。

ミモメモ 遊佐未森メモラブルソングズ
2枚目のベストアルバムで、遊佐未森自身が選曲。
特に前半は他の遊佐ファンに「これってNoelさんが選曲したのかと思った」と言わしめるほど、
私好みの曲が目白押しです(^^)
『桃と耳』との重複はなく『momoism』以降の楽曲が中心になっていますが、『山行きバス』
や『つゆくさ』などそれ以前の曲も含まれていますし、これまでアルバム未収録だった『ONE』
や古賀森男とのデュエット曲『Silent Bells』が収録されているなど、なかなかお得。
『ONE』と『つゆくさ〔小夜曲〕』はリミックスされていますが、それほど違和感はありません。
個人的にはこちらのほうがお気に入りです。
それにしても、『ミモメモ』。もう少しいいタイトルは思いつかなかったのでしょうか・・・(^^;
 






空耳見聞録
[空耳見聞録] No16 Noelfield
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