Yoko Ueno



上野洋子さんは類まれなるクリスタル・ヴォイスの持ち主。
名前を聞いたことがなくても、もしかすると、知らず知らずのうちにどこかでその歌声を耳
にしたことがあるかもしれません。
その澄んだ歌声もさることながら、彼女が紡ぎ出す西洋のフォークロアを思わせるサウンド
も魅力的。
アジアの民族音楽がクローズアップされ、ブームになることはあっても、ヨーロッパの民族
音楽はあまり注目されることがないように思います。最近アイリッシュ・ミュージックが注目
されているものの、それをうまく吸収して日本語で歌うアーティストは、まだまだ少ないと
言わざるを得ません。
上野洋子さんはヨーロッパの伝統音楽のエッセンスを吸収しながらも、日本人の心に響く
楽曲を作り出しています。流行に左右されない彼女の歌は、いつ聴いても決して色あせる
ことはないでしょう。

上野洋子さんは吉良知彦さんや松田克志さんと共に結成したZabadak(ザバダック)の
メンバーとして1986年にデビュー。
1993年に脱退した後もさまざまなユニット、さまざまなアルバムに参加しています(ちなみ
に、松田克志さんはごく初期の時点で脱退。上野さんが脱退した後は、吉良さんひとりで
ザバダックとして活動しています)。
ゲームや漫画などのイメージアルバムを含めると、実に数多くのアルバムに参加している
ため、上野さんのファンを名乗りながら、私が持っているCDはほんの一部に過ぎません。
このページでは、私が持っているCDを紹介します。
今後少しずつラインナップを増やしていく予定ですが、気長にお待ちいただけるとさいわい
です(^^)


☆DISCOGRAPHY
ここで紹介しているものはごく一部に過ぎません。あらかじめご承知おきください。

Zabadak

上野洋子

  • VOICES (1993)
  • Puzzle (2002/01/23)
その他

  • Swirl Word (1996)
  • ancient flowers / Vita Nova (1996/01/24)
  • Lauru / Vita Nova (1996/07/24)
  • ナーサリー・チャイムス (1997/05/25)
  • SHINONOME / Vita Nova (1997/06/25)
  • suzuro / Vita Nova (1997/11/19)
  • CREID / 光田康典&ミレニアル・フェア (1998/04/22)


ウェルカム・トゥ・ザバダック
東芝EMI時代の最後のアルバム。幻想的な楽曲が多いザバダックですが、このアルバム
は特にその傾向が顕著に現れているような気がします。『イージー・ゴーイング』のような
風刺に満ちた歌もありますが、現実逃避したい夢見がちな少年少女のための歌、という
印象を勝手に抱いて、どうも好きになれない時期もありました。
私のお気に入りは、たった49秒と短いながらもブルガリアンヴォイスのエッセンスを醸す
『月/LUNA』。その後の上野さんの作風の原点は、ここにあるのでは、と思います。
初めて聴いたときはかなりのインパクトで、そのせいか今でも満月を見上げると、この歌
が脳裏に浮かんでくるほど。
同じく上野さんが作曲した『シェラフィータ』も好き。

飛行夢(Sora tobu yume)
イーストウエスト・ジャパン移籍後初のアルバム。
私がザバダックのファンになるきっかけを作ったアルバムで、昔CMに使われていたのを
聴いて以来ずっと気になっていた曲が収録されていて、それを運命的な邂逅だと感じた
のが全ての始まりだったのです(笑)
その曲が『Goodbye Earth』。全編英語で歌われているこの歌は、上野さんのかわいらしい
歌声に似合わず、自然破壊の愚かさを訴えるシニカルなもの。当時自然保護に傾倒して
いた私は、その歌詞を知ってますます好きになってしまったのでした(ちなみに作詞・作曲
は吉良さん)。
他には、『Follow Your Dreams』と『砂煙りのまち』もお気に入り。
空を飛んでいるような浮遊感がたまらない前者が希望に満ちた光の歌だとすれば、過去
を振り返り、閉塞感に囚われているかのような後者は影の歌といったところでしょうか。

遠い音楽
吉良さんと上野さんの個性がうまく溶けあっていて、ひとつの到達点に達したように感じ
られるアルバムで、これからザバダックを聴いてみようかな、とお考えの方に、ぜひぜひ
聴いてもらいたい1枚。
フォークロア色が強くて極めて私好み。冒頭の『満ち潮の夜』のイントロを聴いただけで、
もうすっかりお気に入りになってしまったのを覚えています。
全10曲中、上野さんが作曲を手がけたのは3曲。
その中でいちばん好きなのが、まるでマザー・グースのような『Around The Secret』。
作詞を手がけた覚和歌子さんとは、その後『ナーサリー・チャイムス』でもタッグを組んで
います(覚和歌子さんは今では『千と千尋の神隠し』の主題歌『いつも何度でも』の作詞
で知られていますね)。
アルバム全体の中でいちばん好きなのは『遠い音楽』。というより、ザバダックの楽曲の
中でもこれがいちばんのお気に入りです。作曲は吉良さん、作詞は原マスミさん。
『harvest rain(豊穣の雨)』も名曲。作詞は小峰公子さん。彼女はザバダックに数多くの
詩を提供していますが、『harvest rain』はひときわ素晴らしく、私はこの曲に触発されて、
一編の童話を書いてしまいました(^^;

私は羊
童謡めいた『私は羊』やまるで音楽の教科書に載っていてもおかしくないような『遠い国
の友達』がお気に入り。どちらも上野さんが作詞・作曲していて、上野さんらしさが明確に
なってきた印象を受けます。それは吉良さんの楽曲との違いを際立たせることも意味し、
そのために全体を通して聴くと、何となくちぐはぐな印象を受けてしまいます。
それが原因なのかどうかはわかりませんが、購入した当初は何故かあまり好きになれず、
きちんと評価できるほどたくさん聴いていない気が。もっとじっくり聴いてから改めて感想
を書きたいと思います。


上野さんにとっては、ザバダック脱退前の最後のアルバム。有終の美を飾るかのように
質の高い楽曲が収められていて、傑作と呼んでもいい仕上がりになっています。
上野さんが作曲した『五つの橋』は後の『ナーサリー・チャイムス』や『SHINONOME』の
楽曲の萌芽を感じさせる曲。作詞は遊佐未森さんに数多くの素敵な歌詞を提供してきた
工藤順子さん。
同じく上野さんが作曲を手がけた『アジアの花』も名曲といってもいいでしょう。こちらの
作詞は新居昭乃さん。彼女は真冬の音もなく雪が降る夜を連想させる『Psi-trailing』の
作詞も担当しており、冬が大好きな私はもちろんこちらもお気に入りです。
ラストの吉良・小峰コンビによる『Tin Waltz』は夕暮れどきに家路を辿る車の中で聴くと
じーんときちゃう曲。ほっこりと心が暖まるんですよ(^^)
上野さんの歌声に魅せられた私ですが、吉良さんのヴォーカルが苦手なわけではなく、
特にこのアルバムに収録されている『休まない翼』は今でもよく聴いています。

Decade
デビューから『桜』までの楽曲を集めたベスト盤。
ザバダックには数種類のベスト盤がありますが、これがいちばんのオススメのような気
がします。ザバダックを知るための入門編としても最適でしょう。
私のお気に入りは『遠い音楽(Live Version)』。オリジナルよりもかなりスローテンポで、
より味わい深く、じっくりと心に染み込んでくるんです。

リメインズ
レーベルはバイオスフィア・レコード。
『飛行夢』以降のシングルとアルバム未収録だった楽曲を集めたミニアルバム。
初公開の未収録曲『星狩り』がいちばんのお気に入り。上野さんが作曲し、覚和歌子さん
が作詞を手がけた童謡めいた楽曲で、これはザバダックというより、もう完璧に上野さん
の世界。いつ頃収録されたのかわかりませんが、アルバムに収めるならば、『遠い音楽』
あたりがうってつけでしょうか。
『Follow Your Dreams』『砂煙りのまち』『harvest rain』も収録されていますし、その他の
楽曲もなかなかの出来。実はかなりお気に入りの1枚です。

創世記 ザ・ベスト・オブ・ザバダック+2
デビューから『ウェルカム・トゥ・ザバダック』までの初期の楽曲を集めたベスト盤『創世記』。
後に2曲追加し、値段も安くなって発売されたのが「+2」。オリジナルはかなり古いのです
が、再販されたこともあって現在でも手に入りやすい1枚です。
実のところ、初期のザバダックについてはなかなか評価するのが難しい、というのが本音。
黎明期の作品だけに「ザバダックらしさ」がまだ定まっていない感があり、『遠い音楽』以降
の作風を期待している向きには、ちょっともの足りないかもしれません。
『月』や『シェラフィータ』など『ウェルカム・トゥ・ザバダック』に収録されているものを除くと、
私がいちばん好きなのはなんと、吉良さんがヴォーカルを務める『チグリスとユーフラテス
の岸辺』。この曲は後に吉良さんプロデュースのアルバム『賢治の幻燈』でも、アレンジを
変えて『Prologue』として甦っています。